医療情報

「沈黙の臓器肝臓」健康診断でどこまでわかる?

GOT,GPTはスピードメーター

簡単な健康診断では通常GOT,GPT,γ-GTPの三項目を調べます。GOT,GPTはその人が持っている肝臓の能力を見ているわけではなく、肝細胞がどのくらい壊れているかをみているにすぎません。ですから、GOT,GPTの上昇が僅かであっても何十年も異常値が続いている人はもしかしたら肝臓の働き(肝予備能)はかなり低下しているかもしれないのです。自動車に例えるなら、GOT,GPTはスピードメーター、肝予備能はガソリンの残量のようなものと考えれば解りやすいでしょう、肝疾患の中で最もスピード狂である劇症肝炎はGPTの値が数千まで上昇し、数日のうちに肝予備能(ガソリン)を使い果たして死に至ることもあるこわい病気です。慢性肝炎の場合、肝予備能は約30%以下になるまではほとんど身体症状は出ません。さらに肝実質には知覚神経が来ていないため、肝細胞が炎症のため破壊され続けてGPTの異常が続いても痛みを感じることはありません。ただ黙って重労働に耐えているだけです。これが肝臓が沈黙の臓器と言われる理由なのです。

 

生活習慣病予備群の脂肪肝

健康診断でチェックされる肝機能異常者のうち70〜80%の人は脂肪肝が原因です。脂肪肝とは、腸管から吸収された過剰な栄養分が遊離脂肪酸として肝臓へ大量に流れ込むことにより、肝臓に中性脂肪が過剰に貯蓄した状態です。この脂肪滴は細胞内の他の組織を圧迫するため肝機能検査値の上昇がみられます。脂肪肝の原因として過食、運動不足、アルコールなどが考えられ、肝疾患よりもむしろ生活習慣病予備群として、高脂血症や糖尿病がないか注意しなければなりません。飲酒が関与しない多くの症例ではは肝機能の低下は見られないことがほとんどです。しかし特に糖尿病合併例では脂肪肝から脂肪肝炎を引き起こし慢性化が進み肝臓癌の原因になることが知られています(非アルコール性脂肪肝炎)。

 

異常を指摘されたら必ず肝炎ウイルスのチェックと超音波検査を!

健康診断で調べる肝機能検査は僅かな項目だけですが、なかには一生を左右する重要な肝疾患が見つかる窓口でもあります。「最近飲み過ぎているから」「少し疲れ気味かな」などと自分勝手な解釈をせずに、念のため肝炎ウイルスの検査(血液検査でわかります)と超音波検査(10分程度で終わります)を受けて下さい。慢性肝炎の中にも早期に適切な治療を施せば、その進展のくい止めるだけでなく完治できるケースもあります。まずは近くの専門医に相談し、決して放置しないようにしてください。